戦っているのは彼女だけではない -アスリートが向かい合うもの

最近巷に氾濫しているこぴぺがあります。題して

『浅田真央が戦ってきたもの』
http://www31.atwiki.jp/injustice/
ワールドの浅田選手の惨敗を受けて、一時期沈静化していたこういった文章がまた出回るようになりました。ツイッターやブログなど、1個人がネットという世界に向けての発信手段を持ってしまったことも大きいのでしょう。
しかし、私クラスの単なるファンである一般人にすら突っ込みどころ満載、という文章がネット上でどんどん拡散していく、というのはある意味非常に危険な状況なのでは?とも思います。
この方は浅田真央選手を愛しておいでなのでしょう。そのお気持ちはとおといだろう、と思います。しかし、彼女の弁護に走るあまり、肝心な点の見落としがあまりにも多い。

以前これを読み始めたときは、最初の2行で
『信用が置けん』
と投げ出しましたw

一応、今回は最後まで読みましたよw

まず、その2行とは・・・?

 >私がフィギュアスケートを見るようになったのは、リレハンメル五輪のシーズンのグランプリシリーズ、NHK杯からですから、もう17年になろうとしています。

オールドファンなら、これを読んだだけで、「ニワカが知ったかぶってる」と思うはずなんです。この作者の勘違いでなければ、リレハンメル五輪は1994年、スケートで言うと1993-1994シーズンですが、この年にはまだ『グランプリシリーズ』というものは存在していません。
もちろんNHK杯、スケートアメリカ、スケートカナダ、フランス大会(この当時はラリック・トロフィー、現在はエリック・ボンバドゥール杯)、ドイツ大会(ネイションズ・カップ、ボフロスト杯、2003年まで)、ロシア大会(ロシアンカップ、現ロステレコム杯)、中国大会(カップオブチャイナ、ドイツ大会に変えて2003-2004シーズンより開始)といったそれぞれの大会は開催されていました。
しかし、ISUのもとにシリーズ戦として統合され、ファイナル大会を加え、『チャンピオンシリーズ』と呼ばれる賞金大会として出発したのは1995-1996シーズンのことです。http://ja.wikipedia.org/wiki/ISU%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
著者の勘違いなのかなんなのかはわかりませんが、この方の『フィギュアを見始めた』とおっしゃるリレハンメル五輪シーズンにはGPSも、それの前身となったCPSも存在していません。
フィギュアスケート界において、チャンピオンシリーズの発足はかなり大きな出来事でした。ソ連崩壊や東西ドイツの統合、といった東西冷戦の終結、国情の揺らぎで、国から援助を受けてスポーツをしていた選手たちの環境が大きく変わりました。ハード面でもソフト面でも、金銭的な負担が大きくなり、意に染まぬ引退を余儀なくされる選手も増えました。そういった選手たちが競技を続けてゆけるように、という願いもこめたISUの公認の賞金大会でもあるのです。非常に画期的な出来ごとでした。当時を知っている方なら、覚えていないはずはないと思うのですが。


>間違えてほしくないのは、このレポートが「キムヨナ批判」ではないということです。時には、キムヨナ本人を批判するような書き方になってしまうかもしれませんが、私にはそのような意図は全くありません。むしろ、キムヨナもある意味では被害者であるといえると思います。世界最高点をたたき出し、金メダリストとなったキムヨナは、素晴らしい選手だ、天才だ、と思われていることでしょう。ですが、実はフィギュアファンの目から見れば、主観を抜きにしたとしても、稀有な才能の持ち主というには、キムヨナはあまりにも凡庸すぎる。ジャンプにしろ、ステップにしろ、スピンにしろ、スパイラルにしろ、すべての要素において、浅田真央に迫るものですらないのです。

ふーん、そうですか。私には立派なキムヨナ批判にみえますがww

>ですが、実はフィギュアファンの目から見れば、主観を抜きにしたとしても、稀有な才能の持ち主というには、キムヨナはあまりにも凡庸すぎる。

アクセルを除けばもっとも基礎点の高いジャンプである3Lzをエッジエラーなく降り、そしてそれにコンスタントにセカンドトリプルがつけられる、というのは女子としては一流の技術です。男子ですら、シニアに上がったばかりの選手やワールドFS進出境界線上、という選手たちにはセカンド3Tが跳べない、もしくは安定しない選手が多い。
男子シングルで今年ワールド3位になったアルツゥール・ガチンスキーですら、セカンド3Tが安定してきたのは今シーズンに入ってからです。
高度な技術を、それがあたかも凡庸に見えるほどさらっとやってのけてしまう、というのは彼女のスキルが高いからです。
日本で言えば小塚選手のスケーティング、高橋選手のステップ、古くはトッド・エルドリッジやカート・ブラウニングのスケーティング、アレクサンドル・ファデーエフのフットワーク、アレクセイ・ウルマノフのエッジワーク。
彼らはあまりにもさらっと簡単そうにやってしまうから、特にトッドなんかは地味に見えがちでしたけど、当時解説してた五十嵐さんや小川さんが、「ここが難しいんです、すごいんです」とよくおっしゃってましたっけ。

そして、ヨナのすごいところは、ジャンプの入りと出でスピードが落ちない、というところです。これはすばらしいSSです。彼女を凡庸というのなら、イーグルからセカンドに3Tをつけるコンビネーションジャンプを跳べる女子選手を他に出してほしいですww 
申し訳ないが、イーグルからセカンドトリプルのコンボというと、現役時代のヤマトのイーグル~3Lz-3Tしか思い当たりませんw(どなたか教えてください)


>2.トリノ五輪後に4年がかりで浅田真央がされてきたこと

まあ、不正があったかどうかはともかく、どうも意図的に浅田さん有利に働いたルール変更には触れられていませんね。これを読んで「真央ちゃんけなげ、かわいそう」になってる方には信じられないかもしれませんが・・

まず、 
1)トリプルアクセルの基礎点は7.5点→8.2点→8.5点と3度にわたって上昇するも、3Lz以下のジャンプは据え置き

2)回転不足が演技審判に知らされなくなり、必ずしもGOEマイナスにしなくてもよくなる

3)2Aは2回までに制限

4)中間点の導入

5)SPにおけるアクセルジャンプの3A導入

6)FSのスパイラルのレベル廃止、コリオスパイラル導入

ざっとあげてもこれだけ、彼女に有利に働いたルールがあるのです・・・他にもありますが。まず、1)の3Aの基礎点の上昇ですが、これは相対的にクワドの価値を下げることにもなり、男子オタにはひっじょうに迷惑な改定でした。

そして、特に「浅田ルール」としか言いようのないのが5)の「SPにおけるアクセルジャンプの3A導入」です。男子のSPクワド導入ですら長野五輪後の1998-1999シーズンのことでした。
当時、現役で試合でクワドを決めるちからを持っていたのがエルヴィス・ストイコ、カクセイシン、ミン・ジャン、アレクセイ・ウルマノフ、アレクセイ・ヤグディン、イリヤ・クーリック、アレクサンドル・アブト、ティモシー・ゲーブル、本田武史、といったところ。安定度はともかく、ワールド最終グループ全員、くらいの人数がクワドを降りていたのです。
SPはFSとは異なり、「必須要素」をいかに完成度を高く行うことが出来るかを競うものです。ですから、Jr,などは規制も多く、BVに差がつきにくくなっています。そのSPにおいて、現時点では浅田さん1人しか得をしないルールが導入された、これが「浅田ルール」でなくてなんでしょう?

しかし、浅田さんは今回のワールドでこの有利なルールを生かしきれませんでした。
エッジエラーの厳格化も、バンクーバー五輪の何年も前に明らかにされていました。
しかし、「エッジエラー上等、自分は3Aで点を取るからいい」とばかりに直さなかったのは浅田さん自身です。浅田さんと同じ欠点を持っていたロシェットは、シーズンを棒に振る苦労をして、ルッツジャンプの踏み切りのエッジを直しました。ロシェットは言っています、
「エッジ矯正はなるべく早く取り掛かるべきです。17歳が限度。19歳では遅すぎる。」と。

そして、私が「怒髪天をついた」といってもいいのがこの一文。

> あの大舞台(バンクーバー五輪)にノーミスで滑れたこと。それくらいは讃えてもいいと思われるかもしれません。

それくらい・・・って。あのですね・・・・
4年に一度の五輪、鉄板といわれる優勝候補がノーミスに近い演技をする、というのがいかに難しいことか、わからないのでしょうか?
シングルで言えば、ヨナ以外には、カルガリーのボイタノとヴィットのFS、ソルトのヤグのSP,FS、アルベールヴィルのペトのFSくらいしか私は記憶にありません。

昨年のバンクーバーでライサが金をとるまで20年以上、男子シングルの前年ワールドチャンプは五輪金に縁がなかったのです。そして、複数回の五輪出場をなしとげ、複数個のワールドメダル(もちろん金を含む)を持つ選手たちでも、五輪のメダル(金メダル、ではなくメダルそのもの)に縁のなかった選手は何人もいるのです。
男子では、トッド・エルドリッジ(1996年ワールド優勝、アルベールヴィル、長野、ソルトレイク五輪出場)、カート・ブラウニング(1988、1989、1991年ワールド優勝、カルガリー、アルベールヴィル、リレハンメル五輪出場)、アレクサンドル・ファデーエフ(1985年ワールド優勝、サライェヴォ、カルガリー五輪出場)、そしてブライアン・ジュベール・・・いや、彼はひょっとしたらソチで。。。
ワールド5回の優勝を飾りながら、五輪では銀メダルが最高だったミッシェル・クワンは、ワールドのすべてのメダルと交換してもいいから、五輪金メダルがほしい、といったことがあったそうです。それだけ、五輪で力を発揮する、ということは難しいことであるし、だからこそ、それがアスリートとしての強さの証明になるのです。

体調やルール、天候、すべてのものと戦い、勝利を収めたもののみが勝ちうるのです。そしてそのために、アスリートたちは血のにじむように苦労を重ねてくるのです。

最後に、浅田さんのジャンプ動画を。
Mao ASADA's 3A-2T (GOE +0.20)
http://www.youtube.com/watch?v=oOIt7ZdSlXQ&feature=related




御投票よろしく、更新のモチベになります
にほんブログ村 その他スポーツブログ スケートへ
にほんブログ村

続きを読む

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
スポーツ
99位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ウィンタースポーツ
13位
アクセスランキングを見る>>
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

拘りと屁理屈
検索フォーム
カテゴリ
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR