白鳥とメフィストフェレス―表現は技術という礎あってこそ・アレクサンドル・ファデーエフ―

ロシアではサーシャ(アレクサンドル)と言うのは非常にポピュラーな名前で、ナショナルクラスのスケーターにも何人もいるにかかわらず、なぜかこの名前にはビッグタイトルに縁のない選手がいて・・・ヤグディン、プルシェンコと時代がかぶって光を浴びることの少なかったサーシャ・アブトもそうですが、このサーシャ・ファデーエフも然り。
特に彼は複数回のナショナルタイトルも五輪出場経験も持ち、またワールドタイトルも持ちながら、とうとう五輪のメダルに手が届かなかった選手でもあります。カート・ブラウニング、トッド・エルドリッジ、が同じ範疇に入るかもしれません(ジュベもひょっとしたらこの中に・・・(涙・・いや、彼にはまだソチがある、と思いたい

今回はサーシャ・ファデーエフを取り上げてみます。彼が活躍していたのはコンパル末期。コンパルソリーをこなしながらも、高難度ジャンプを跳ぶ選手が増えてきた時代に当たります。「ジャンピング・ジョー」といわれ、4回転にこだわっていたヨセフ・サボフティック、「ミスター・トリプルアクセル」の別名を持ち、フリーの天才、として華をもっていたオーサー。カルガリー五輪では「ブライアン対決」としてボイタノとオーサーの争いに焦点が当たりましたが、当時、三つ巴となってワールドを争っていたのはこのサーシャとボイタノ、そしてオーサーでした。カルガリー五輪では、コンパルソリートップだったのはこのサーシャなのです。
この3人、「全てにおいて高い技術高難度の技を持つファデーエフ」「大技持ちで華のあるスケーティングをするオーサー」「安定性に富み、バランスの取れたスケーティングのボイタノ」という感じでした。

ただ、このころのサーシャはどうしても高い技術にのみ目が行きがちで、
「技術に特化するあまりに機械的で、表現としては面白みがない」とも言われていたのでした。同時期、国内に「個性派」といわれたコチンがいましたから、よけいそのような評価を受けたかもしれません。しかし、年齢を経ていくにつれてSPでの「現代の太鼓」(パーカッションをつかったSPではこれが最初、かなー?)「禿山の一夜」といった、素晴らしいプロを見せてくれるようになります。
そして、プロになって・・・・

ダイナミックで敏捷性に富み、スピードに乗ったプロが身上、だった彼がみせてくれたまったく違う味のプロ。おそらく、この年がプロデビューの年かなー。


サン・サーンスの『白鳥』です
Alexander Fadeev 1990 WorldCupFSC TP

彼はアマチュア時代は正確な技術から構築されたスピードとダイナミックさが売りで、(特に代々木ワールドのプロや、翌年のユーロなどが特徴的です)終盤近くのステップからの立て続けのジャンプシークエンスなどには本当にわくわくさせられたものでした。
しかし、そんな彼がプロデビューして初の選手権、それもテクニカルに持ってきたのがこの『白鳥』でした。今までの彼とは一転しての『静』の表現。そのギャップが素晴らしかった。
一歩間違えれば単なる地味なプロとなってしまいますが、そうさせなかったのが彼の技術の確かさです。ターンやステップひとつひとつの正確さやバレエを叩き込まれたところからくるのでしょう、上体の動き(特に肩から腕の線)や手先の所作の美しさ。

旧ソ連に限らず、コンパル時代のスケーターはそういった部分が本当に確かでした。
陸上のタイムがどんどん縮まっていくのに代表されるように、技術や技は進歩します。しかし、その競技の礎、といいますか、根本の部分はけして古びることはありません。それを持っているのがコンパル時代のスケーターたちなのです。

そして、『歌劇 ファウスト より』
Aleksandr Fadeev (RUS) - 1994 World Team Figure Skating Championships, Artistic Program

多分、この年彼は30歳だったと思うのですが・・・多少御腹が気になるかな(笑)
しかし、全身これバネ、というのは相変わらず。そして、メフィストフェレスへのなりきりっぷりがすごい。

そしてもうひとつ、ピアソラの『忘却』 解説は伊藤みどりさんです。
Alexander Fadeev 1995 Canadian Pros AP


高く、なおかつバランスの取れた技術を持っているからこそ芸術的な表現も追及できる、ということなのでしょう。

これが、彼の若いころ。上でも述べた、1985年、代々木ワールドでの優勝の際のフリーです。
Aleksandr Fadeev (URS) - 1985 World Figure Skating Championships, Men's Long Program

こちらは同プロの佐野さんの解説。ちょっと画質がいまいちですが・・・。エキサイト振りがすごいですww
佐野稔版
そして、彼の身体能力の高さのわかるのがこれ。NHK杯ですね。解説は五十嵐さん。
FADEEV A. 1989-1990 SP

どうしてそこで跳んじゃえる!って感じですwww


つなぎの濃さやSSは今の選手にもけして見劣りしないでしょう。
実際、新採点システムに移行するに当たって、SSの「優れている」という指標に彼をおいた、という話もあるくらいです。

そして、彼は初めてプロに4回転を組み込んだ選手でもあります。
FADEEV A.世界選手権 1983 LP


ああ、サーシャ、そんなあなたがなぜ、複数回の五輪(サライェヴォ、カルガリー)に出場していながらメダルに縁がなかったんだ・・・
特にサライェヴォでは公式練習でクワドを成功させている、というのに・・
1984 Alexander Fadeev - First QUAD rotation (Soviet Union) OLYMPICS


やっぱり、五輪の女神と、ワールドの女神と、ユーロの女神は別人なんでしょうかねえ・・・


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No title

今や4回転の時代に入り、しかも芸術性の高い技術を兼ね備えたプログラムを見事に熟す(羽生結弦、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャン)がいる。
しかし、過去も含めて僕の心に残る唯一の選手はソ連時代(カザフ共和国出身)のアレクサンドル・ファジェーエフ選手だ。
1984年のNHK杯で優勝した時のアレクサンドル・ファデーエフのNHK録画を見たい。 曲(スコットランド民謡「アニー・ローリー」、他)と 彼の演技が素晴らしい感動を与えてくれた。 番組進行役の女子アナも ファジェーエフの演技に(あぁ~♥)と、うっとり してしまったようだ。

★今後の期待に宇野昌磨を挙げておく。 4回転に成功はしているが、今は高さが全然足りない。 彼には滞空時間のある大きなジャンプを身につけてもらいたい。 クアドラプルアクセル(4回転半)の時代は迫っており、他のジャンプは全て4回転、更には5回転を目指して練習に取り組む選手が必ず出てくるからだ。 宇野昌磨の華麗なスケーティングに超難度のジャンプ・コンビネーションジャンプが備わった時に、彼は最高位のフィギュアスケーターの名を世界中に轟かせるだろう。


参考:フルネームは
            Александр Владимирович Фадеев
(ロシア人の発音)アレクサーンドラ ヴアヂーミラヴィチ ファジーフ
プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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