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美談か言い訳か―アスリートのプライドと人間としての説明責任

フランスのフィギュアスケート選手、ブライアン・ジュベール選手の台詞の中で、忘れられない言葉があります。
「負傷や病気を公にする時期は本当に難しい。よい成績を収められればそれは美談になるが、成績が悪ければ単なる言い訳に過ぎなくなってしまうからだ」
ジュベール選手

彼は、幼いころの感染症手術のため、腎臓が片方ありません。そして、ジャンパーの宿命、ともいえる足の怪我にも何度も泣かされてきました。
フランスのスケート連盟がソチ五輪に向けて若手選手にシフトしていく中、結果を出し続け、
「今年のワールドには間に合わないかもしれないが、来年のニースでは必ずや自分なりの答えを出す」
と述べ、ニースまでの現役続行を明らかにしていました。

特に、最近
「だれそれちゃんは言い訳をしないから偉い」
「だれそれは言い訳ばっかりでだらしない」
といった評価をよく聞くので余計かもしれません。
ただ、メディア媒体によって、同じ時刻に聞いた言葉でも、それが明らかになるのがネット媒体によって1分後か、雑誌媒体によって1ヶ月後か、それによって一般人の受ける印象というのは全く違ってくるので一概に鵜呑みにはできないな、とも思うのです。そして、その「言い訳」とやらも、選手自身の発言なのか、選手の周囲の人間のリークなのか、はたまたマスメディアの取材なのか、でまったく違ってくるでしょう。

選手たちの発言(特に大きな大会前後の)というのは

「怪我や病気を理由にしたくない」
という人間として当たり前のプライドと、
「万全の体調でもこの程度だ、と思われたくない」
というアスリートとしての誇りと、「聞かれた質問にはきちんと答えなければ。」
という人としての誠実さと、それらが入り混じった、ものすごく重いものだと思います。

特に、その選手が思うような演技ができなかったときはなおさらです。
ファンとしてもそうでしょう。
体のどこも悪くなく、それでもその程度の演技しかできなかったのか?それともどこか怪我や病気を隠してその大会に臨んでいたのか?
それによって、ファンの心配も大きく異なります。ですから、自らを支えてくれるファンの存在や時間を割いてくれるスタッフの存在を自覚している選手ほど、自らの状況を真摯に伝えようとします。
それが、国やスポンサーからの援助を受けているアスリートの義務であり、ファンの応援を自覚している人間の責任だからです。


セリョージャ(セルゲイ・ヴォロノフ、ロシア)を例に挙げましょうか。

2006-2007年の彼は、ロシアナショナルで下位だったにも拘らず、ジュニアワールド3位、と言う成績と、ナショナル首位だったグリャ―ゼフ選手のユーロでの不調、と言った理由でワールドに初出場していました。
それまでワールドはもちろん、ユーロにも出たこともなく、大きなチャンピオンシップといえばJr.ワールドのみ。そんな自分がナショナルチャンプのグリャーツェフを差し置いてロシア(過去、とはいえ強豪国の一つ)の代表として選ばれた、という責任を嫌というほど感じていただろうと思います。これが、彼がワールドに派遣されるきっかけとなったジュニアワールドの演技です。

ナショナル、ユニバーシアード、ジュニアワールド、と連戦で、かなり疲労もたまっていたことでしょう。
SP22位、ぎりぎりの順位でフリーに進出するも、もう一人ロシアから出場していたアンドレイ・ルータイも不調で、ロシアの翌年の出場枠は一つ、となってしまいました。

演技後のセリョージャのインタビューです。

「2度目の3アクセルを終えて着氷したとき、膝にひどい痛みが走りました。まるで、古傷が再発したかのような痛みでした。その後のことは、どうやって演技をしたのかさえ覚えていません。しかし、氷の上に出たからには、きっちりと演技を終えなければなりませんでした。なぜなら、僕はアスリートだからです」
彼の性格からいって、
「足が痛かったからこれだけの演技しか出来ませんでした」
というのは、本当に悔しかっただろうし、嫌だったでしょう。しかし、会場から引き上げる際には歩くことも出来ず、車椅子のお世話になった、ということなので相当きつかったのだろうと思われます。
だからこそ、彼はインタで述べたのでしょう。
「万全の体調であれば、自分はこんなものではない、ロシア代表の選手はもっとすばらしい演技ができるのだ」と。
そう、ロシアが弱体化したわけではない、ということを示すためにも。ただ、これを言い訳ととるひともいたでしょう。実際、ソヴィエト・ロシアと連綿と続いてきたフィギュア大国の選手枠がひとつとなった、というのは非常に大きなことでした。
実際、帰国したセリョージャとルータイはかなり叩かれた、と聞きます。

特にセリョージャは、
「怪我のせいにしているから一流になれない」
「いつも必ず言い訳を用意している」
などとお偉方から言われ続けてきました。
翌年、ナショナルチャンプとなり、速攻ロシア選手枠を2つに戻しても、ナショナル2連覇を達成しても、プルシェンコがいたなら・・といった内外からのプレッシャーをずっと受けてきました。

そして、バンクーバー五輪後、プルシェンコががワールドを直前にキャンセルし、その代役としてやってきたのがこのセリョージャでした。ナショナル2位にもかかわらず、欧州選手権不調による五輪失格のショックはセリョージャにとって大きく、「五輪競技を見ることすらできない精神状態だった」(コーチのウルマノフ)という状態だったそうです。

そして、このワールド出場の通達が本人にいったのが、セリョージャによれば、SP開始4日前!
ち、ちょっとそれはあんまりな…
よくまあそんな状態からモチベーション上げてこれたもんです。

トリノのリンク。SP開始で彼が登場したとき・・・
胸のあたりから腰回り、げっそり肉の落ちた身体、削げた頬、尖った顎。そして目の回りの隅…うわー。やめてくれー、と正直思いました。いや、髪を切ったから、細く見えるのかも・・とも思い直しながら。

・・・おそらく、精神的にも肉体的にも十分にはほど遠い状態だったはず。それでも彼は来た。
しかも、2008年ナショナル以降回避したことのないクワドを入れ、3Aを降りた。

こちらは、演技後のバックヤードでのインタでしょう。自分の演技も含め、五輪でのライサとプル、そしてSPにクワド(それも4-3)を入れることについていろいろ聞かれているようです。

2978091_572198837_11small.jpg   2978091_34686328_98small.jpg

右は、同じシーズンのカップオブチャイナのキスクラ。半年とたってません・・・
顔の形が・・まったく違うじゃないか(涙

自分に代わって五輪に出たボロデュリンについては
「彼には何の悪感情も持ってません。ボクたち選手は、行けと言われたら行かなきゃいけないんです。そして成績をあげなければ。セリョージャ・ヴォロノフに悪いから断る、なんておかしいでしょう?」
と述べていました。そして、結果としてロシア1枠となってしまったこのトリノワールド後のインタではまるで自分を責め苛むように、謝罪の言葉を繰り返していました。

あれは、見ていて本当につらかった。

プルシェンコは、「クワドを跳ぶ自分」にこだわり、そのプライドを貫き通してこの年のワールドをキャンセルしたわけですが、その裏にはぐちゃぐちゃになった後輩たちのプライドがあった、ということをプルにも、彼のファンにも知っていてもらいたい、と思います。



特に、セリョージャの言った
「選手は行け、と言われたら行って、成績をあげなければならない」
という言葉には凄く重いものを感じました。

それが、ナショナルチームメンバーであり、国の援助を受けている人間の義務なのだからと。





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テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

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No title

はじめまして。
ネットサーフィンでたまたまこちらのブログを見つけ、とても興味深く読ませていただきました。

特にこの記事は多くの人に読んでもらいたい、考えてもらいたい内容でしたので思わずコメントさせていただきました。
言い訳か説明責任か・・・本当に難しい問題です。
しかし一つだけ確かなのは、リンクに上がる選手達はそれこそ血のにじむような努力を積み重ねてその場に立っているということ。
その努力を鑑みることなく、言葉の端々だけを捉えてヒステリックに批判することは絶対にしてはならないことだと思います。

最近本当にフィギュアスケートファンなのか?と目を疑う人が増えてきているので、そういう人には本当に自分達の言動を省みてもらいたいと思います。

素敵な記事をありがとうございました。


競技に向かう姿勢

侘助さん>

はじめまして、いらっしゃいませ。

コメントありがとうございます、レスが遅れまして申し訳ございませんでした。

>言い訳か説明責任か・・・本当に難しい問題です。
しかし一つだけ確かなのは、リンクに上がる選手達はそれこそ血のにじむような努力を積み重ねてその場に立っているということ。
その努力を鑑みることなく、言葉の端々だけを捉えてヒステリックに批判することは絶対にしてはならないことだと思います。

まさにそのとおりです。
「最近、○○ちゃんは言い訳しないから・・・それに引き換え・・・」的な論調が多いので、?と思いこれを記した次第です。
特に、日本の場合、昔のCMの文句ではありませんが「おとこはだまって・・・」的なイメージが強いせいか、アスリートに必要以上のストイックさを強要する面が多いように感じます。
彼らも人間ですし、オフレコの部分では弱音を吐きたくなることも多いでしょう。そういった面すら許されないのだとしたら、それはとても怖いことだ、と思います。

冷静に受け止めてくださり、とても嬉しい感想をいただきまして、ありがとうございました。これを機会に、また是非お寄りください。

ありがとうございました。

No title

遅くなりました。

メディアの注目が低い水球なので、参考になるかはわかりませんが、自分なりの感想を書かせてもらいます。

人が言葉を発するときは、その中に必ずその人の想いが込められているものです。その人の想いが、どれだけ込められているかが、その言葉の重みや説得力に繋がると思います。

アスリートの場合は身を削るような練習をしていますので、競技に懸ける想いというのは並々ならぬものがあります。

一方で、モノの見方は千差万別で、一方から観て美しいものでも、反対から見れば醜いこともあるでしょう。当たり前のことですが、そういうことをわかった上で、発言する側も、それを聞く側も受け答えしなければならない。

特にアスリートの場合は、その影響力が大きい分、持っている想いの伝え方を学ぶ必要があります。語尾一つで、美談が言い訳になってしまうことはざらです。

僕がプレーしているハンガリーでは、練習中、試合中にミスをした選手は言い訳をよくします。放っておいたら、それだけで練習が終わってしまうくらいに笑。決して良いことだとは思いませんが、そうやって自分の想いを伝える術を学んでいっています。

言い訳と意見は違う。言い訳は選手の甘えですが、意見は選手の意志ですので、そこを見分ける必要があるでしょう。難しい所ですが、選手も、監督も、メディアも、観客もたくさん失敗をして、経験して学んでいくことです。

生きることは学ぶこと、スポーツもまた学びの場です。

思いついたままにつらつらと書いてしまいました。ぼくもまだまだ伝え方を勉強しなければなりませんね笑

No title

こんにちはー。大変共感いたします!
こういうのは選手の皆さんそれぞれのポリシーがあるかと思いますが、私個人としては、調子悪いなら悪いで現在の状況をきっちり説明して欲しい派です。

特に小塚くんと激突した高橋くんなどいい例です。本人は大丈夫!と言ってましたがあそこまで激不調なら正直に現状を語って欲しかった・・・ネットで心配説が散々飛び交って高橋ファンの私は気が気ではありませんでした。本当に大丈夫(怪我していない)ならどういう程度に大丈夫か説明して欲しかったですし、その後コーチ筋から試合出れる状況じゃなかったなんて話が出ちゃ、小塚くんだって気の毒です。。。小塚くんはしばらくショックを引きずっていた様子でしたし。。。

今だから申しますと、あのタイミングでぶつかってきた小塚くんに「馬鹿野郎!」と心の中で罵っていた私です(だって、高橋くんの曲演奏中で高橋くんに優先権がある状況で、ただでさえ故障持ちなんだから、ぶつかって来ないでーヤメテー!って思いまして^^;)。
でもああいう展開は、小塚くんには気の毒でした・・・私達ファン以上に心配して気にしていたはずですから、本人黙して外野から不安説が立ち上がる状況は精神的にきつかったでしょう。

なのであのケースでは、高橋君なりの気遣い或いは男気が仇になった、と私個人的には見ています。なのにミクシィとかでは「言い訳しない大ちゃんカッコヨス!」論調一辺倒で、すごく違和感がありました。

言い訳と説明は違うのよ!と言いたいです。ついていけない、日本人の浪花節・・・戦前の気合論から未だ脱却してないんですね。

長くなって失礼しました。

難しい

はじめまして。本当に難しい事ですね。

説明する選手、しない選手、どちらもそれぞれ考えがあってそうしているんでしょうが。
受け取り手はどの様に受け取るか、それも人それぞれですものね。
何を言っても聞く耳を持たなければ、ただの言い訳と取られます。
だから言葉が独り歩きするのを防ぐために何も言わない。
今は簡単に広がってしまいますから。

そういう選手も増えている様な感じもします。
注目度の高い選手程大変何じゃないかな。
プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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