シニアへの旅立ち― ドミトリー・アリエフ 世界ジュニア選手権総括


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(FS後のキスクラにて。左よりルカヴィツィンコーチ、ジーマ、振り付けのグリンカ女史)


まれに見る高得点続出で、「ジュニアおそるべし」という感じで終えたフィギュアスケート世界ジュニア選手権男子シングルですが、FSでクワドルッツを含む複数クワドをクリーンに決めたヴィンセント・ジョウがSP5位からの逆転優勝、そしてジーマは2位、ついで同じロシアのアレクサンドル・サマリンが3位、ということで幕を閉じました。というわけで、今回はジーマことドミトリー・アリエフにスポットをあててみました。

世界ジュニア選手権リザルトページ

昨年の世界ジュニアでのジーマは、SP1位で折り返したものの、FSで崩れ、表彰台を逃す、という結果に終わりました。なまじSPの結果が良かっただけに本国での期待は膨らみ、崩れて結果を出せなかったことについては、かなり批判も浴びたようです。しかし、その際にしっかりと支え、傷ついたジーマをフォローしてくれたルカヴィツィンコーチとの絆は一層深まり、振付師のグリンカさんやモロトフさんともガッチリと信頼感で結ばれたチームが出来上がったような感じを受けます。


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(左より、モロトフさん(FS振り付け)、グリンカ女史(SP振り付け)、ジーマ、ルカヴィツィンコーチ)


ジーマのルカヴィツィンコーチに対する思いはこちらに⇒ドミトリー・アリエフ:僕にとってコーチは第二の父であるという結論に達しました。

そして2年連続のロシアジュニアチャンピオンとして迎えた今年のジュニアワールド。
まずはSP。
3A/3Lz-3T 3Lo
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この「オブリヴィオン」の哀愁を帯びた旋律に負けない深いエッジの濃厚な滑り。「ジュニアかよ・・・」という感じを受けた方も多いのではないでしょうか。美しい3Aから、曲の盛り上がりに合わせての伸びのあるスパイラルからの3Lz-3Tコンビネーション。そして美しいフリーレッグを生かした3Loの出の動作からのニースライド。本当にこのプログラムは1つ1つのエレメントがパズルのピースのようにしっかりとハマり、美しい旋律を紡ぎ出しているかのようです。
ジュニアナショナルでは、コンボの入りがFSと同じステップからに変更されていて、ちょっとがっかりしたのですが、この大会では復活していて安心しました。
このジュニア版「オブリヴィオン」は、私の今まで見てきたSPプロの中でも最高クラスに位置すると思います。本当に素晴らしい。

そしてFS。
4T 3A-2T/3A 3Lz-3T 3Lo-1Lo-3S 3F< 3Lz 2A
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ヴィンスの素晴らしい演技の後、ペトロフ、サマリン、ジュンファン、とクワドの決まった素晴らしい演技が続き、正直昨年の二の舞になってしまうのでは・・・とも思いました。
しかし、ジーマは強くなっていました!
冒頭の4Tでこそお手つきしましたが、あとはしっかりと立て直し、ニースライドからの3Fに回転不足が付いたほかは、特に大きな取りこぼしもありませんでした。特にStsqではレベル4を取り、中でもGOE加点3を付けたジャッジが2人いました!本当に、このステップで彼に魅了された方は多いのではないかと思います。

ジーマはJGPF後のインタビューで、

“Q:あなたがプログラムに4回転トウループ1本のみを残すことにしたのは、演技により安定性を求めてのことですか?

D:はい。僕は、僕たちが磨き抜いてきた質の高いプログラムと4回転トウループを見せたかったのです。
クワドを2本にすると、少し質が落ちてしまい、ジャンプに追いかけられるようになって、プログラム全体がクリアに見えなくなってしまう、ということもわかりました。
シニアのグランプリシリーズフランス大会で、アダム・リッポンは1本の4回転ジャンプで構成された180点を獲得する素晴らしいフリースケーティングをしました。
その後、エフゲニー・ウラジーミロヴィッチ(ルカヴィツィンコーチのこと)が戻って来て、クワド1本でやってみよう、そのかわり、クリーンで質の高い、洗練されたスケーティングを見せるんだ、と言いました。1本の4回転ジャンプを持つアメリカ人のスコアは、他の2本、3本の4回転ジャンプを持つアスリートとほぼ同じ点数だったのです…”

という問答をしています。詳しくは⇒ドミトリー・アリエフ:「僕はファイナルへの扉を最後に閉めて、それを最初に開いた」(2) 

今年のFSプログラムはクワド1本で行く、という決定はここでなされたのでしょう。
世界ジュニアが近くなり、多くの選手が複数クワド投入を表明する中、焦りがなかったはずはありません。しかしジーマは、その決定を信じ、プログラムを信じ、答えを出しました。

実際、ジーマは今年のJGPS第一戦のオストラヴァ大会で見せたように、(当時は変更前のプログラム「仮面の男」でした)クワドを2本入れてもプログラムをまとめあげる力は持っていますし、練習では4Lzも4Sも成功させているそうです。

こちら「仮面の男」

これもいいプログラムだと思うんですけれどね、うーん。

ただ今回のFSプロは、私が思うに、クワド1本だからこそ生きるのだと思います。冒頭の4Tから長めのつなぎ動作を経て全くタイプの違うジャンプである3Aからのコンビネーション。そしてスピン、ステップ、そして後半の6ジャンプ。
高難度ジャンプを見せておいて、即じっくりと彼のスケーティングを生かしたステップで魅せる。
このスケーターはジャンプだけではないぞ、とここでしっかりとアピールするわけです。心憎い演出です。実際、この滑りでジーマに落ちた人は多いと思うんですよ。
複数クワドにするとすれば、後半6ジャンプはきついでしょうから、ステップの位置も変えざるを得なくなるでしょうし、つなぎ動作も減ってしまうでしょう。となれば、現在これだけ高く出ているPCSもある程度は低くなってしまうかもしれません。
このプログラムを作り上げたのはアイスダンス出身のワレンチン・モロトフさんですが、彼は選手の個性を引き出し、かつその良さを見せつけるようなプログラムを作ることに非常に長けていると思います。

そして、上の写真でも分かるように、FS後のキスクラで一番喜びを爆発させていたのは、コーチのルカヴィツィン氏でした。これだけ早くジュニアの技術進化の進みが早く、多くの選手がクワドを投入してくることは、彼にも予想外のことだったかもしれません。プレッシャーは相当なものだったのではないでしょうか。その中で、自分の生徒を、また配下の振付師たちのプログラムを信じ、彼らもそれに応えた。本当に嬉しかったことでしょう。
そしてジーマも「第2の父」と慕うコーチの信頼に応えることができて、きっと嬉しかったに違いありません。昨期のジュニアワールド、FSで崩れ涙ぐみながらリンクサイドに戻ってきたジーマを無言で強く抱きしめていたコーチの姿がよぎり、私は思わず涙してしまいました。

そして、来期からジーマはシニアに駒を進めることになるわけですが、それにしてもこの大会はとても良いステップになったと思います。もちろん優勝してシニアに進むにこしたことはありませんが、いやー、ヴィンスにあれだけの演技をされてしまえばお手上げです。逆に良い目標ともなったことでしょう。

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(表彰台メンバー。ジーマ、ヴィンセント・ジョウ、アレクサンドル・サマリン)


選手権で台乗りを果たしましたから、来期のJGPS出場枠も増やすことができ、またこれはサマリン、ペトロフの活躍もありますが、ジュニア選手権の枠も3枠に保ち後輩たちに託すことができました。女子だけではなく、男子もジュニア・ノービス勢が伸びてきているロシアとしては、特にJGPSの出場枠の増加は嬉しかったことに違いありません。また、ジーマ自身もシニアのGPS2大会の切符を持ってのシニア昇格となります。五輪切符へ向けての大きな一歩です。
昨期の雪辱も果たし、心置きなくシニアに上がって行けるでしょう。彼の来期の活躍を心から期待しています!



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Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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