親友同士を分けた明暗 アリエフとサモヒン ―世界ジュニア選手権男子


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(写真上、ダニエル・サモヒン、写真下、ドミトリー・アリエフ、ともにISU公式より)

女子の総括のエントリーでも述べましたが、とにかく今年の世界ジュニアは良くも悪くもドラマティックな大会ではありました。
男子は女子のようにアクシデントに見舞われる、ということはありませんでしたが、とにかく順位変動が・・・・
男子総合リザルト
見ていただいてもわかるとおり、SPとFSのスモールメダルのメンバーが全く違う!
SP(ドミトリー・アリエフ、アレクサンドル・サマリン、デニス・ヴァシリエフス)
FS(ダニエル・サモヒン、ニコラス・ナドゥー、樋渡知樹)
というところに、いかにドラマティックな大会であったか、がわかっていただけると思います。
まさに今回は、決まった際の高難度ジャンプの威力、そして新採点システムのある意味での残酷さをつくづく表した大会でもありました。
旧採点システムにおいては、SP,FSとも順位は席次数で表され、それの合計でしたから、大きな逆転、というのは起こりにくかったのです。大体において、メダルを取るためには最終グループ入りが必須、金メダルを取るためにはまず上位3人に入っていなければ、という感じでした。
それが、SP最下位からでも(計算上は)優勝が狙えるようになった、というのがこの採点システムのスポーツ的な公正さであり、怖さです。今回は、これが見事にあからさまになりました。


実は、SP1位で折り返したジーマと、9位だったダーニャ(サモヒン)は親友同士。
SPの前には、ロッカールームで仲良くペリスコしていました。

ジーマの言葉を借りましょう―

「ダニエル ― ダーニカと呼んでいます― ええ、よく知っています。僕は彼という友人を持ててとても嬉しい。親友といってもいいかな。彼はどんな人にもオープンでフレンドリーなんだ。氷上ですら笑顔を絶やさないでしょう?
僕たちはフィギュアスケートに対して、一人一人異なった取り組み方をしています。コーチの指導方法によっても違ってくるしね。
おそらく彼がノリノリになって滑れるのは、「楽しみ」を得る為に滑ってるからじゃないかな。 
・・・・中略・・・・・・
ダーニカと僕は、1年前のリュブリャナのジュニアグランプリの試合で会い、その3時間後にはもう親友になってました。
練習、バス、ホテル・・・。わかります?それだけで親しくなるのには十分でしたよ。
その試合で僕は3位、彼はもうちょっと下だったかな。そしてリガでまた僕は3位、彼も5位くらいの結果で、お互いに約束したんです。
来期は絶対にジュニアグランプリファイナルに出ようって。必ず2人で、って誓い合った。僕と彼は性格が似てるんだ。なんでも最後までやり遂げる、ってところがね。
だからバルセロナでは、それができたことで大いに喜び、笑いあったんです。」
拙ブログ「司祭は陰陽師に追いすがる」 ドミトリー・アリエフ ロングインタビューより

そんな親友同士の彼らの運命は、SPでも、FSでもこれ以上ないような別れ方をしました。

SP。
ジャンプにミスが連続して、大きく順位を落とし、9位となり第3グループの発進となったダーニャ。
ダニエル・サモヒンSP


スピンでレベルは落としたものの、ジャンプは全て綺麗に決まり(3AのGOE加点はなんと2.00!)トップ発進となったジーマ。
ドミトリー・アリエフSP


親友同士の明暗はここでくっきりと別れたかのように思われました。しかし、さらにドラマティックな展開がFSで待ち受けていようとは・・・・

FS。
9位だったダーニャの滑走順は13番。そう、第3グループのトップでした。勢いよく飛び出していった彼の後姿からは、力みはほとんど感じられず、とにかく最後までやりきるんだ、という決意のほとばしりが現れていました。
そして彼の演技曲は「シャーロック・ホームズ」。
この日は、日本ではホームズ映画が2本同時に上映されていて、
「ひょっとしたらホームズの日かも。ダーニャ、ひょっとしたらやるかも!?」
などと思っていたのですが・・・。
いやー、まさにその通りになりました。
ビシビシ決まるジャンプ。ガンガン上がってゆくTESカウンター。ダイナミックでエンターテインメント満載の演技。ルッツが1つダブルになったものの、あとは完璧。
まさにダニエル・サモヒンの真骨頂、といった感じの演技でした。そして、この演技と点数は、あとに続く選手たちにも重くのしかかりました。
ダニエル・サモヒンFS


そして、ダーニャという重たい漬物石を背負ったまま最終グループへ。

最終グループのトップ滑走者はジーマでした。クワド1本の構成にしてくる、と聞いていたので、最初のジャンプであるクワドコンボはミスできない、と力みが入ってしまうのでは、と心配でたまらなかったのですが・・・・・・。
以前彼はインタで「一番取り返しのつかないミスは?」ということを聞かれて、「最初のジャンプの失敗はなんでもそうです」と答えていたことがあったので、尚更それが気ががりでした。
案の定、最初のクワドコンボが入らなかったところから、とうとう立て直しがききませんでした。
1本目の3Aでお手つき、2本目の3Aもダブルになってしまい、起死回生を狙ったのであろう2A-HL-3Sのファーストを3Aに、と狙うもダブルになり、おまけにサードジャンプのサルコウもダブルになってしまいます。そしてコンボ券を余らせたまま終えてしまいました。まさに、ヌケはコケより怖い、ということを実証した演技となりました。
ドミトリー・アリエフFS


そして、疲れ果てた顔をしてリンクサイドに戻ってきたジーマを無言で固く抱きしめたのがルカヴィツィンコーチでした。
ジーマの肩が震えていました。おそらく泣いていたのでしょう・・・。
そしてジーマは追ってきたカメラに手を振り、真っ赤な目で一生懸命笑顔を作り、キスクラへ向かってゆきました。
これを見ていて私は切なくて悲しくて。
ロシアジュニアチャンピオン、JGPFメダリスト、ユース五輪メダリスト、という様々な肩書きを背負ってこの大会に臨んだジーマ。
とはいえ、まだチャンピオンシップは初体験の16歳の少年。
ネイサン・チェンや山本草太、といった強豪の欠場の報が入るたびに、彼に課せられるハードルが高くなっていったことは容易に想像がつきます。3枠必須、から表彰台、そして金メダル・・・・と。
それらの期待やプレッシャーを背負い、SPでスモールメダルをとったことだけでも評価してあげたい。しかし、そのスモールメダルの重みが、彼の演技の思い切りの良さを奪ってしまったのであれば、これもまた皮肉、とも言えます。



SPでこそは出遅れるも、イスラエルに初のジュニアワールド金メダルをもたらし、自身も初のチャンピオンシップの表彰台中央の栄光に輝いたダーニャ。
SPではトップに立ち、ロシア12年ぶりのジュニア金なるか、の期待の中、気負いすぎて崩れてしまったジーマ。

それは、失うものはない、とにかく挑戦するだけだ、と開き直って臨むことができたダーニャと、トップに立ってしまったがゆえに守りにも入ってしまったジーマの違いなのかもしれません。無心に崖を登っていたクライマーが、たまたま下を見てしまい、すくんで身動きがとれなくなってしまった、というような・・・。
いつになく細く頼りなく思えたジーマの後ろ姿からは、そういった恐怖感も見て取れました。

勝負の世界は残酷、と言いますが、余りにも明暗くっきり別れた2人でした。


しかし、ジーマは国に帰ればすぐに国内戦が控えています。良い演技をしても、「なぜあの時これができなかった」悪い演技であれば「所詮こんなもんか」などと、いろいろ批判は浴びると思います。でも、こういったこと全てを栄養として、さらに大きくなって来シーズン戻ってきて欲しい、と思います。

そしてダーニャは来期から本格的にシニアへと進むでしょう。スケールの大きい選手がまた一人誕生しますね。本当に楽しみです。


2人の未来に幸あれ!




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Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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