克己心と頑固さ ―セルゲイ・ヴォロノフJスポーツインタビューから


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他に書きたいテーマもいくつか溜まっているのですが、Jスポさんが興味深いセリョージャのインタビューを上げてくださったのでまずこれについて。

ロシア男子シングル・ヴォロノフ選手インタビュー

ぜひ読んでいただきたいです。彼の人となりが本当によく出ている。

自分を「頑固者」と評し、「我慢強さ」に触れているところは、ああそうだよね、君は昔からそうだったよね、変わっていないなぁ、と安心するとともにこれからへの期待を抱かせるものでした。そして、ジェフリー・バトルへの憧れとリスペクトを熱く語っていることにも。

セリョージャは初めて派遣された代々木ワールド(この年はJr.ワールドとの掛け持ちでもありました)でジェフのタンゴに魅せられ、当時コーチだったウルマノフの大反対を押し切って翌年のFSをピアソラメドレーにし、これでロシアチャンピオンとなり、またイエテボリのワールドでロシアに2枠をもたらした、という経緯があります。また、彼の我慢強さ、にもウルマノフは何度かインタビューなどで触れていて、古傷の痛みに耐えながら練習に励む彼を、「私ならばとても耐えられない、スケート自体をやめてしまうかもしれない」と言っていたことがありました。

そして多くの人びとを驚かせた「FSのプログラムを昨年のものに戻す」ということについてですが、これには私は正直驚きませんでした。明らかにこなしきれていなかったのがわかりましたし・・・。
セリョージャとしては、憧れ続けたジェフの世界、本当に滑りたかったでしょうが、それを大事に思う故に、中途半端な形では終えたくなかったのでしょう。

これがテストスケートで初披露された時のもの。セリョージャの言う「ジェフのプロはジャッジの側から見てエレメンツが効果的に見えるように配置されている」というジャッジ側からの映像です。ジャンプ難度を落としているので、スケーティングにしっかり気持ちが行っているのがよくわかります。

これを見たときには、この滑りのまま高難度ジャンプを入れることができたら、まさに彼の新境地が開ける、と大喜びしたものでした。
タラレバはないですが、インタの中で彼も触れているように、プログラムの出来上がりが遅かったことや、ジェフと一緒に作り上げる時間が余りにも短かったことが影響しているかもしれません。セリョージャはけして1つのプロをモノにするのがはやいほうではないので・・。ジェフに滑ってもらった動画を参考にしつつ、メールなどで連絡も取りながら練習をしていた、とのことでしたが、振付師本人が身近にいて、アドバイスをもらえる状況とはやっぱり違うでしょうから、煮詰まってしまったのかもしれません。

ただ、このテストスケートの映像を見た時、彼の表現したい、と思っていたことは直ぐにわかりました。そして、それはCSで初めて見た時のあの衣装で確信に変わりました。

あの白黒二色に秘められていたものは、モノクロームの世界に表される光と影(彼はインタで「二面性」という言葉を使っていましたが)、理想と現実とのギャップ、その中でもなお希望を持ち続ける人間の強さ、そして脆さ、曲調が変わっての「デボラのテーマ」に象徴される部分からは過去への郷愁、残してきた思い出への慈しみ、そういったものを出したいんだろうなと考えていました。(ほぼあたっていたのが我ながら嬉しい)

ただ、試合でジャンプに気が行ってしまうと、柔らかさがお留守になり、ダイナミックさが雑さに堕し、音楽がBGM化するのが今までの彼の常だったので、このプロの中盤~後半部分の表現をジャンプを入れながらするのは難しいだろうなぁ、と危惧はしていました。彼比でつなぎの多く、柔らかい表現の要求された「シンドラーのリスト」では、ジャンプのヌケが目立ちましたから、そうなってしまうかな、という覚悟もしてみていました。

NRW杯で衣装を変えてきたときは、ああ、ひょっとしたら迷いが出ているのかなあ、と思っていましたので、この「FSを昨期のものに戻す」という決定にはさほど驚かなかったのですが、インタでの「ジェフのようには滑れない」という言葉には彼の悩みの深さとともに、深い絶望感、その中においても自分を冷徹に見つめる目を持ち続けていられた彼への頼もしさ、も感じました。

彼自身によるFSの解釈の解説はこのようになります(Jスポインタビューから)

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の曲なのですが、映画の物語を下敷きにしたものではありません。「二面性」を見せたプログラムです。前半の速いパートでは、アメリカのギャングの世界のイメージで、辛辣な現実とそれに懸命に立ち向う姿、みたいな。そういう風にステップとかでも表現しています。後半のスローパートでは、かつての幸せや愛した人への想い、そういった哀愁を表しています。今を生きる私たちの「二面性」というか。気持ちがすさむと思い出が救いになることもありますね。

いかにも彼らしい、深いテーマだなと。そして、

「気持ちがすさむと思い出が救いになることもありますね。」

この一言ですみません、私泣きました。ほんと、辛酸をなめてきた大人にしか言えない科白だなと。



この「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は彼にとって「シンドラーのリスト」やEX版の「ロミオとジュリエット」昨期のEXの「帰り来ぬ青春」と表現においては同一系統にある気がするので、彼のクセのない、不器用そうだけれど真摯な(←褒めてます)スケーティングをしっかりと見せてもらえるようなEXプロに組み直してもらって見てみたい、と考えています。

EX版 ロミオとジュリエット


帰り来ぬ青春 (NHK杯 ver. )




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いでよ!TESカウンター! ―GPF雑感

先ほどTwitterでTESカウンターについてつぶやいたところ、かなりなご好評をいただいなので、加筆も含めまとめてみます。

TESカウンターというのは、海外の動画を見たことのある方ならおなじみですが、画面の左上に出てくるTES(テクニカル・エレメンツ・スコア)を演技中にリアルタイムでカウントするものです。

元々はフォロワーさんとの「煽りビデオの是非」といったところから始まった、フィギュアスケート認知の裾野を広げるにはどうしたらいいのか、ということでした。
現在は、どうしても女性ファンが目立つフィギュアスケートですが、男性にも見てもらうにはどうしたらいいだろう?という面から考えてみました。

そこで落ち着いたのは、TESカウンターをつけるべき!ということ。

フィギュアに男性ファンを取り込むことを考えると、TESカウンターは必須じゃないかと思います。
誤解を恐れずに言えば、男性の方が「数字」というものにこだわる印象があります(ソースは父親)。
父はスポーツ全般が好きで、特に野球が大好きだったのですが、毎日、新聞のスポーツ欄に載っている「打者成績十傑」「投手成績十傑」といった欄を見ながら、
「○○はもうちょっと四死球数を減らさないと長いイニングは任せてもらえないよなぁ。三振数は多いんだから防御率も~」
とか、
「△△は得点圏打率が高いし、3割切っても打順下げてでもやっぱスタメンに置いときたいよ、代打率はそんなに高くないしな」
などと、素人評論家めいた事を言っていたものです。

野球ファンの多くは男性ですが、投手なら勝ち数、防御率、QS、HQS、セーブ、ホールド、投球イニング数、といった数字の集合体からその選手の特徴を分析し、組み合わせ「僕の考えた最強の継投」「俺の考えた最強のローテーション」とか組んだりします。
流行語大賞にも上がった「トリプルスリー」も、いわば最高の打者評価のための数字の集合体です。そういった「数字で選手を評価する」性質が身についている人々には、TESカウンターはハマると思います。

TVでやってるから見る、的なライトな人々の中には、ジャンプ以外では点数は動かない、という誤解もありうるんじゃないかと思います。だから、スピン・ステップなどの一見よくわからん動きでも、加えられる点数が違ってくる、となれば、絶対に興味を示すんじゃないかと。
TESカウンターが日本で導入されないのは、演技が終わったあとにTESカウンターが上下することがあり、点数操作を疑われるからだ、と聞いたことがありますが、それは上下する理由をきっちり説明すればいいこと。(技術審判がスロー判定で~、とかね。)
野球だってスロー判定で本塁打が取り消されたりすることもあるんですから。
とにかく、大雑把なものでなく、細かい数字の積み重ねで点数がつけられているんだ、ということを納得してもらうにはTESカウンターはとても役に立つと考えます。
そして、ルールの縛りの中で、それぞれ基礎点が異なるエレメンツを組み合わせ、いかに高得点のプログラムを作成するか、などというのは育成ゲームオタクにはたまらないんじゃないでしょうか。

「ぼくのかんがえたさいきょうのだせん」のノリで、「僕の考えた最強のプログラム」なんて考えるのは数字マニアには非常に楽しいと思います。
「よしこれだ!」
「ブー、ザヤってますー」なんてね。

プロトコルを見せての解説も、最近やっと行われるようになってきたようだけど、やっぱり演技中に大技か決まるたびにカチ、カチとTESカウンターが上がっていくのを見るのは独特のワクワク感があります。
逆に遭難演技の際のカウンターの静止状態の悲しさたるや・・・。

数字は正確だが冷酷でもある。

そういった面を見てもらうためにも、日本の放送(特に地上波)にもTESカウンターを希望します。

という訳でTESカウンター付きの動画を。

Lがその演技者の前までの暫定トップのTES(TESトップの選手でないところにご注意)。Cは演技者のTESです。1つ1つのエレメンツをこなしていくごとにカウンターが上がっていくのがわかります。

宇野昌磨 GPF FS


ハビエル・フェルナンデス GPF FS


羽生結弦 GPF FS





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プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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