1Loの謎 ・ハーフループとシングルループ ―コンビネーションジャンプを考える


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今回は同じく(1Lo)と表記されるハーフループジャンプとシングルループジャンプについて書きたいと思います。

まず、この動画を見ていただきましょう。カート・ブラウニングの「カサブランカ」(’93世界選手権)です。3Lzの着氷を除いてはほぼノーミス、と言って良いと思います。(本当はセカンドが両方トリプルになる予定だったのでしょうが・・)
これでフィギュアにハマった、という方も何人か知ってます。名プロですよね。


そして、ジャンプにご注目ください。ジャンプ前の繋ぎの巧さももちろんですが(スパイラルから3Fとか!)3A-2T、3S-2Lo.とセカンドループ、セカンドトウの2種のコンビネーションを入れています。
そして終盤のジャンプシークエンス(当時はこう呼ばれていました)
すみません、ここで大きなミスを!(ご指摘のコメントありがとうございます)

現在のプロトコル表記なら「2A-1Lo-3S」の三連コンビネーション、となると思います

ではなくて、ここでカートが跳んでいたのは
「2A-ハーフループ(左バックインで着氷、そのまま右バックアウトに踏み変えて)ー3T」


でした。現在のプロトコルに書くとしたら「2A+1Lo+3T+SEQ」になるのかな。ハーフループから3Tの踏切で重心が移動しているので、シークエンス扱いになるかと。(自信有りません)
カートはハーフループからのジャンプシークエンスが抜群に上手く、特に2A-3S+SEQは絶品でした。それが頭にあったせいで、勘違いしてしまいました、申し訳ありません。

ここから見ると、やっぱりトウを付いていますね。

彼はこのジャンプシークエンス、もう1つ別角度から別種のものを。'89年のワールドです。演技前にSPのダイジェストやインタが入ってますが、それも含めてお楽しみください。
例のジャンプはここから


「ダブルアクセル、ハーフループ、トリプルサルコウ、beautifuly done!! 」と実況が言っていますね。

さて、ここまでは前置きでして・・・・(長い)
昨シーズンから目立って増えてきたハーフループ(-1Lo-)を挟んだ三連コンビネーションについて書いてみたいと思います。このハーフループコンボが3連として表記されるようになったのはバンクーバー五輪後で、それまではジャンプシークエンスと呼ばれ、+SEQ表記で、ジャンプの基礎点の和の8がけでした。
ジョアニー・ロシェットなどが得意にしていて、後半によくこれを成功させていました。

ロシェットの演技 (’09年ワールド)
ここから 3T-3S+SEQ(当時の表記) 


そして、バンクーバー五輪シーズン後のルール変更で、このジャンプはハーフループを1Loと記載し、3連コンビネーションの一種となりました。

このハーフループを挟んだコンビネーションにするのはどんな意味があるのか。
普通のコンビネーションだとセカンド以降に付けるジャンプは着氷足と踏切足が同じトウループかループに限られてしまいます。しかし、ハーフループを挟むことによって足を替えて、サルコウやフリップなどにつなげて行けるので、バリエーションも多くなりますし、組み方によっては基礎点もあがります。

ざっくり言うと、ハーフループというのは逆足イン側で着氷するシングルループ、というかんじでしょうか。

ですからどうしてもステッピングアウトに見えやすく、三連のはずがきれいに流れないでカックン、と途切れる感じがしちゃう、ということで嫌う方も多いんだろうと思います。
カートやロシェットのをご覧になるとわかるように、上手い人がやると「タン、タン、シュッ」って感じで、とてもリズミカルなジャンプなんですが。

実際ステッピングアウトしかけたのをハーフループに持って行ってシークエンスにしちゃった例もあります


アレクサンドル・ファデーエフ ‘86 ワールド
ここから 3Aステップアウト2S


そして、今まである一部の選手しかやっていなかったこのハーフループを挟んだコンボを何故試みる選手が多くなったのか?
これは14-15シーズンから取り入れられたダブルジャンプの回数制限の影響が大きいと言えるでしょう。多くの男子の場合、コンボ券をフルに使い切るためには○ー3、○ー2、○ー2-2と概ね3本(セカンドトリプルが入らない場合は4本)のダブルジャンプが必要ですが、これですと制限に引っかかってしまうため、2Tと2Loの両方を跳べるようにしておかねばなりません。
セカンドトリプルがダブった場合や、クワドが抜けてダブルになった場合もコンボのキックアウトの危険が増します。
ですから、多くの場合得点源である三連を生かすために、サードジャンプにTやLo以外(多くの場合はS)を用いることのできるハーフループのコンビネーションが多用されるようになったのです。

また、ハーフループとシングルループはプロトコル表記が同じ1Loであるため、勘違いが起こりやすいのですが、上で書いたように、全くの別物です。

踏み切り方も同じ、空中で1回転するところも同じなのですが、シングルループは右バックアウトでの着氷、ハーフループは左バックインで着氷します。


ワイスのジャンプ教室 ループジャンプ編(シングルループをよくご覧ださい)


以下、タイトルから当該ジャンプの位置に飛べるようにしてあります

フェルナンデスの3F-ハーフループー3S


ヴォロノフの3Lo-シングルループー2Lo


ファデーエフの2A-ハーフループー3S


足元を見て下さればハーフループのコンビネーションとシングルループのコンビネーションの違いがわかっていただけるかと思います。

ただ、こうして見ると新採点になってから、ハーフループのコンボ(以前は+SEQ)はあまり取り入れられていなかったせいか、当たり前のようにプログラムの中にジャンプシークエンスを組んでいた旧採点の選手にハーフループ巧者が多い気がします。もちろん伊藤みどりさんやリピンスキーも跳んでいました。
新採点では一般的に取り入れ出してまだ短いハーフループコンボですが、キレイに決まるととてもリズミカルで美しいものです。


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【シーズン回顧・そして来期へ】セルゲイ・ヴォロノフのこれから―


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今年のセリョージャの思い出の一枚を・・というとやっぱりこれになってしまうかも(笑)
彼のトレードマークともなったネイビーブルーのへちまカラーのノルディックセーターです。あんまりこればっかり着倒してる彼に、GPFの際
「いつまでそのセーターを着てるんですか?」
とお聞きになった方がいて、そしたら
「クリスマスまで」
という答えが返ってきたとか。っつーことはおそらくロシア正教のクリスマスだから、年明けか・・・。
と思っていたら、ユーロにもワールドにも着ていたのには流石に驚き。「ヴォロノフのセーター」といえばすぐこれが思い浮かぶほど、ツイ上では有名になったのでした(笑)

そして、今シーズンのセリョージャは、といえば・・・・・


・ネーベルホルン杯、ワールド以外出場した国際試合では全て台乗り(フィンランディア杯、ロステレコム杯、NHK杯、GPF,
欧州選手権、国別対抗戦)という安定した成績


本当にベテランの醍醐味、というか根っこの部分における強さ、を見せつけてくれたシーズンであったかもしれません。
まるでシーズンという大河ドラマの脇を固める名俳優、といった感じでした。
特に安定しまくっていた斬鉄剣のようなクワド、特にSPで無類の正確さを誇った3A、そして地味にうまいスピンの精度の高さが彼の強みだったと思います。
そしてベテランの落ち着き、という面がすごく現れていた、と思ったのがGPFのSP.
いきなりスタートで羽生がとんでもない点を出し、会場のざわめきが収まらないままリンクイン。それでもノーミスで演技を終えてのけました。続いた無良、フェルナンデス、といったところがミスを重ねたところを考えると、さすがベテラン、と思わざるを得ません。しかし、ファンとしてはこの演技にはも少し点を出して欲しかったです(笑)

GPF男子SP 流れを見るためにもフルバージョンでご覧下さい




・2006-07シーズンから出場し続けていたGPSにおいて、挑戦8年目において初のGPF進出

これは、CoCでの衝突事件が尾を引いて、羽生結弦がNHK杯では精彩を欠いた、というラッキーな面もあるのですが、それにしてもSP,FSきっちりと揃えロステレコム杯2位、NHK杯2位、と安定した成績を収めたのは彼の地力の強さ、と言えるでしょう。
GPFを決めたNHK杯でのEX



・27歳、というフィギュアスケーターにおいてはベテランの年齢ながらSP,FSともにクワドを入れ続け、ジャンパーとしての力を見せつける

元々セリョージャはクワドをモノにしてからは無類の安定感を誇り、バンクーバー以前の点数制的にはクワドジャンパーには向かい風、といった時期でもずっとクワドを入れ続けてきたジャンパーの1人ではあるのですが、特に彼のクワドの価値、というのはSPでクワドコンボをいれ続けている、ということだと思っています。
現在の点数制では、SPにおけるクワドコンボはセカンド3でなければ意味がない、といってよく(4-2では後半3-3と同じか加点によっては負けてしまう)、クワド1本でSPに挑む際には st4、3A 3-3(後半)が主流になりつつあります。 (これはこれで後半のコンボをミスった際にはリカバリーが効かない、というリスクもあるのですが)


・ロステレコム杯SPにおいて、90点台をたたき出す(これは現在引退選手も含めたPB9位で、90点以上は11人しかいない)

これはもうとにかく動画を見ていただきましょう。解説の織田くんが冒頭のクワドコンボに対して、
「何度も見ていたくなるジャンプですね」
と言っていたのが印象的でした。



・国別対抗戦のFSにおいて、選手生活初の3Lz2本の構成を成功させ、シーズンベストを更新

セリョージャは今までクワド2本の構成を成功させたことは何度かありましたが、ルッツを2本入れた(タブルでも、です)構成に挑んだことはなかったんですね。それだけ3Lzを回避していた期間が長かった、ということも言えるわけなのですが
還ってきたヴォロノフのトリプルルッツ
ここに来て3Lz2本の構成にしてきて、それをしっかりと成功させた、ということは非常に大きかったと思います。
彼は膝や踝に古傷を持っていて、特に今年は膝痛に悩まされ、ワールドのFSで崩れたのもそれが原因だったわけなのですが、今回のように3Lz2本の構成ができると、古傷に負担をかけない構成ができるようになります。怪我の状況で4T2本→4Tと3T、になっていたのが 4Tと3Lz、にすることができるからです。これは大きい。

国別対抗戦FS



・体が続く限りスケートを続けてゆきたい、と発言、来期のプログラムは海外で作る、と発表。

今期に続いてどんどん新しいものに挑戦してゆきたい意思を示し、プログラムについては「うまくいけばとっても素晴らしいものができるよ!」とコメント。
そして彼自身、それを楽しみにしているかのような印象でした。
また、今シーズンは成績も良かったせいか、本当にスケートが楽しい、という感じが彼の滑り自体から伝わってきて、ファンが増えたのもそういったところがあるのかなぁ、と。
それがすごくよく現れていたと思う国別のEX




本当に今期は特にNHK杯を境に日本でも彼の認知度、好感度が上がった気がして嬉しい限りなんですが、きっと彼のスケートするのが楽しい、強いライバルたちと一緒に競えるのが嬉しくてたまらない、勝敗なんて二の次さ、って感じのところが、潔いしカッコいい、素敵、と思わせる所以なんじゃないかな、と思いました。それが特によく現れていたのがこれ。
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動画がこちら。そう、NHK杯の表彰式です。



来期も現状にとどまらず新しいモノに挑戦していく意欲満載みたいで楽しみでたまりません。
とにかく古傷とは仲良くお付き合いして大事な時に暴れださないようになだめておいてもらいたいものです。

頑張れ、セリョージャ、Stay healthy!



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【シーズン回顧・そして来期へ】コンスタンチン・メンショフのこれから―


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写真は、ロシアンナショナルでSPの滑走を終え、後半グループの選手たちを見ているメンショフとモロトフコーチ(左)です。
細身のようですが、さすが現役のアスリート、腕の筋肉がすごいですね。

さて、このメンショフにとってはこのシーズンは大きな出来事が起こりました。

・まずは、31歳過ぎてのSPクワド2本挑戦。これは国内戦のパニン・メモリアルで成功させてから、ほとんどコンスタントに降りていました。特に素晴らしかったのがエリック杯のSPです。

Konstantin Menshov. 2014 Trophée Éric Bompard SP 87.47


そして、FSは「戦場記者へ捧ぐ」をテーマにしたパフォーマンスでしたが、特に欧州の記者たちからはウクライナ紛争に絡めて政治的な意見を引き出そうとされ、だいぶストレスになったようです。
そして、もう一つこのFSで彼を苦しめたのは、今期から採用されたダブルジャンプの回数制限でした。特に彼はセカンド・サードジャンプもトウループでしたから大な手直しをしなければならなかった。
セカンド以降にループジャンプを入れるか、ハーフループ(-1Lo)を入れた3連を組むか、コンボ券を使い切らずに置くか・・・。
テストスケートでは3連のところで3S-2T-2Lo,3S-1Lo-2T(2Sだったかな?)も試みて降りてはいました。

実際彼はこのエリック杯でコンボのキックアウトで台のりを逃しています。
Konstantin Menshov. 2014 Trophée Éric Bompard FS 145.75

またロシア選手権のFSでもジャンプを跳びすぎてキックアウト、3位の座をアジヤン・ピトキーエフに譲りました。

・そして、彼のこれからの道を変えるかも知れない、のがマリア・アルテミエワの振り付けを行ったことです。
マリアのバイオ
コレオグラファーの欄に、オルガ・グリンカ女史とともに、コンスタンチン・メンショフの名前が。
以前はグループの子供たちに降り付けたことはあったが、本格的なコンペプロは初めて、ということでした。
GPSクラスの選手の振り付けは初めて、ということですね。このプログラムはコスチュームも斬新で、「彼シャツ」と言われて有名になりました。マーシャがジャンプの調子がイマイチだったため、放映される機会が少なかったのが残念です。
マリアのロシア選手権

やはり、彼女をいかに綺麗に魅せるか、ということに心が割かれていると思いました。そして、PCSでも振り付け、表現関係の分野での点数が結構高くもらえていたので、「振付師・メンショフ」としての評価もそれなりに高かったと言えるのではないでしょうか。

ただ、ロシアンナショナル以降、続けていくのか、やめてしまうのか、そういった情報が全く入って来なくなったので本当にハラハラしました、このまま辞めるんではないだろうか・・・。そうこうしているうちに、

「来季に向けて準備をしている、音楽のアイデアも出来ている。来シーズンに向かってゆくのみだ。国別は他人事と考えている。辞退者が出るとは思えないからね。とにかく来期にいいプロクラムを作れるようにしたい。」
というコメントがあり。。。。

ルカヴィツィンコーチによれば今はニューヨークに滞在中、月末にはサンクトに帰り、少しクールダウン、それからラトビアの合宿、スウェーデンキャンプと続くようです。

また、メンショフはいつもこの時期新しい靴を慣らすそうですが、それが今年はとてもうまくいっていて、既にトリプル全種、加えてクワドも跳べているそうです。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

そして、メンショフのこれからのスケジュールですが・・・・昨年を参考に予測を立ててみたいと思います。

現在ルカヴィツィン組はニューヨークに滞在の模様です。
5月末にサンクトに帰り、基礎練、そしていつも行っているラトビアキャンプ、スウェーデン合宿、でだいたい体を作り上げ、ニースにバカンス、というのがパターンです。そして・・・・

9月(1週、2週ころ)テストスケート (ナショナルメンバーほぼ全員)

9月中旬 ロシアカップ第一戦(サマーラ)

9月末 CSネーベルホルン杯

10月初旬 CSオンドレイ・ネペラか CSフィンランディア杯のどちらか。
ただし、日程がかなりきついので、フィンランディア杯に出た場合は

10月初旬のロシアカップ第2戦(ヨシュカル・オラ)をスキップの可能性も。

GPSがスケートアメリカに当たらない場合 パニン・メモリアル(昨年はこの大会で初めてSPクワド2本を成功させ優勝しました)
      
GPS×2試合

12月 GPF(出られれば)
     ゴールデンスピン(ザグレブ)  

12月末ロシア選手権


とにかく、
ステイヘルシーで頑張ってもらいたいものです。


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プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

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