痛みとの、己との戦いの果てに -セルゲイ・ヴォロノフ 世界選手権FS


CAXYD1eVIAACovd.jpg
(フィギュア電車に貼られていたセリョージャのポスターの写真です。撮してくださったフォロワーさんのご好意でお借りいたしました)

本当に写真のセレクトが素敵ですよね。これを見てワクワクしていた時に、いや、SP4位で発進して(膝の痛みのことも知らずにいて)ひょっとしたらロシア3枠、セリョージャのEXも見られる?とドキドキいていた時に戻りたい・・・・

こちらが世界選手権のリザルトページです→世界選手権リザルト

こちらが演技動画です
Sergei Voronov. 2015 World Championships. FS


グループ一番滑走、というのを知った時から、不吉な予感はしていたのですが(練習から膝を休める時間がありませんから)、残念なことにそれがあたってしまいました。今年、失敗のなかった4Tが抜けて2Tに。そして・・・・。2つ目の3Aがシングルになった時点でもう見ていられず、さっき動画で見直したのでした。
これほどの大遭難は2009年のユーロのFS以来でしょうか。この時はストレス性の疾患から悪心・嘔吐に悩まされ、練習の際はダブルジャンプしか跳べなかった、という状況で、試合後には即入院、という状況だったと聞いています。


今回も、練習後、膝に痛み止めを打っての出場だったそうです。痛み止めといってもアスリートですから、ドーピングの問題との絡みもあり、使える薬は限られていたことでしょう。
また、上海入りしてから急激に痛み出した、とのことなので、モスクワと上海との気候差が古傷に影響したのかもしれません。
ジャンプだけではなく、ステップでもレベルが取れていないので(これはSPでも)、スケーティングの際に膝がきかなかったのだろうな、と想像がつきます。
そして、そんな状況の彼にトドメを刺したのが後半の3連コンボのキックアウトでした。これがなければもう少し順位は上だったでしょうに・・・

しかし、痛みに耐えながらリンクに上がり、最初の4Tに失敗した時点でもう心が折れてもおかしくないのに、そのまま頑張って最後まで滑りきった彼を、私は心から誇りに思います。
そして、ここが大事な点なのですが、自分の体調を鑑みて、2本目のクワドを入れず、安全策とも言える3Tにしたこと。あそこで無茶をして4Tを入れ、万一転倒でもして棄権、などということがあれば1枠の危機も有り得たのです。
さすがベテラン、落ち着いていたな、と思います。(後半の1A、コンボのキックアウトはあくまでも結果論です)

演技を終えてキスクラ入りしたセリョージャに、待機席にいたミーシャたちが少しでも点出て!と祈るような仕草をして、まるで自分たちが遭難したかのようながっかりした表情をしていたのを見たとき、ああ、セリョージャは年下の選手たちからも慕われているのだなぁ、ととても嬉しく思いました。彼らにとって、セリョージャが落ちてくれば自らの順位も上がるのに、そんなことなど考えてもいない表情で。
ああ、アスリート同士っていいなぁ、と思ったのでした。そして、ありがとう、と。

ただ、セリョージャにとっては、FSでコフトゥンが良い演技をして順位を上げてきていただけに、自分がいつもの演技さえできれば3枠とれる、との思いがあったでしょう。それからすれば、本当に悔しく、そして申し訳ない思いがあったろうと思います。
自分さえ・・との思いがきっとあるでしょう。
トリノワールドの際に、
「僕たち選手は行け、と言われたら行かなければならないのです。そして成績を残さなければ。それが役目なのです」
と言っていたセリョージャの言葉がいま、胸にこたえます。

ユーロの時ですら、「肝心な時に力を発揮できない、周りのミスで上位になれただけ」と言われ、以前はお偉方に
「病気だの怪我だのに逃げているから一流になれない」
「痛いだのなんだのと言って練習をしない」
とさんざん叩かれてきたセリョージャ。

それに耐えてここまで来た君の強さを信じたい。

けれども、、彼が叩かれるのは本当に辛いです。
日本で枠を減らした男子が叩かれているのを見ると、セリョージャも自らを責めているのではないか、そして国に帰ったらお偉方たちに叩かれるのではないか、というのが心配でたまりません。

しかし、友人も言ってくれたのですが、この年齢でセリョージャが今年残したWRは間違いなく彼の実力の証です。最後の世界選手権のFSこそ怪我で力が出せませんでしたが、間違いなく彼はそれだけのものを持っているのです。

ロシアのお偉方たちにはそれを評価して欲しい。それを心から願います。

終わり良ければすべて良し、と言う諺がありますが、最後が悪いとどうしてもそれ以前に残した良いことは忘れられがちです。この世界選手権でも、セリョージャはSPでは4位の成績を残しているのです。

今はともかく体も心も休めて、必要な治療があるのならしっかりして、来期に向かってもらいたい、と思います。
国別対抗も休んでいい、と思います。
もちろん、ファンとしては彼の演技が見たいです。けれど、選手生命を縮めるようなことはして欲しくありません。
心身ともに健康を取り戻すことが今は第一だと思います。

Давай  Серё́жа! 頑張れ、セリョージャ!

そして、この世界選手権は、新しく設定されたダブルジャンプ(特に2T)のザヤックルールに引っかかる選手の多い大会でした。これはシーズン全般を通してみてもそうです。
以前、このルールについては書いたことがありますが→コンビネーションジャンプを考える ― ダブルジャンプのザヤックルール適用について
今シーズンを振り返って、再びこの問題を取り上げてみたいと思います。(贔屓選手が引っかかりまくったので若干八つ当たり気味でもあるのですが(笑))


ぽちよろしく、更新のモチベになります
にほんブログ村 その他スポーツブログ スケートへ
にほんブログ村

こちらも
blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

「それを決めるのはジャッジだ」 セルゲイ・ヴォロノフ、世界選手権SP


6b96acb4jw1eqgxzsdx0mj20iz0sg0uh.jpg


世界選手権の男子SPが終わりました。自爆する選手はとことん、良い演技も素晴らしいものは素晴らしく、というジェットコースターのようなSPでした。見ていてくたくたになった方も多いのではないでしょうか。

思いもかけない結果といえば、リギーニやペーター、ナンソンのSP落ち、無良くん、小塚くんの1番・2番滑走、でしょうか。

そのへんは詳しく書いて下さる方がいるかと思いますので・・

ずっと気になっていたセリョージャのことを。
練習風景が映った時、しきりに膝を気にしていて、何度もなでたり、足首を降ったりしていたので、また足のどこかを傷めたのでは?と気になっていたのですが、
いつもお世話になっているユーリさんがセリョージャのインタを上げてくださいました→セルゲイ・ヴォロノフ:ウォームアップと演技の間に麻酔を射ってくれた医者のお陰で、助かった



彼の膝の痛みはジュニアの頃からの慢性的なもののようで、本人も言っているようにこれはジャンパーの宿命とも言えるものです。NHK杯の時も、かなり痛みがあったようで、アイシングしながら羽生君と肩を組んで笑っている写真をいんすたに上げていました→https://instagram.com/p/wgVahQPjhL/?taken-by=sergeyvoronov

そんな状況の中の彼のSP演技です。


こちらはロシア版、解説はトランコフです→World Figure Skating Championships 2015. SP. Sergei VORONOV

4Tの後にターンが入ってしまっていたのによく落ち着いてセカンドを、それもトリプルをつけたなぁ、と。落ち着きとともに、何とでも跳んでやる、という根性でしょうか。そして、3Aをキレイに降り、鉄板の3Lo.
もうちょっと点くれよー、とも思いますが、これはデニスとのスケーティングの差と、ステップの取りこぼしでしょう。彼にスモールメダルを取ってもらいたかったですが、残念だけれど仕方ない。
転倒、コンボのステップアウト、と一見彼より大きいミスがあったように見えるデニス・テンより下だったことについてインタビュアーに聞かれていますが、

「コンビネーションでのミス、スリーターンを2回入れてしまった…それが3-4点。あとを決めるのはジャッジだ。個人的にデニスの滑りは好きだ。彼のほうが自由で、自信があるような感じなのかもしれない。」

と述べています。

この「決めるのはジャッジ」というのは彼の一貫した信念のようで、ワールド初出場の際、SP,FSとクワドを入れながら7位そしてクワドレスだったバトルが優勝したことについて聞かれ、
「バトルはルールに従い、その上で勝ったのだから、何も責められるべきではないと思います。それはジャッジが決めるべきこと。ルールは同じように選手に適用されています。確かに、クワドはリスクを伴いますからもう少し評価を上げて欲しいとは思いますが、そういったことは我々が言うべきことではないし、僕は彼のスケーティングが大好きです。また、ジャッジにとってはジェフのスケーティングはクワドと同等の価値が有る、と思われたのかもしれません」
といった答えをしていました。
翌年のスケートカナダでも、クワドレスの選手に敗れた際にやはり、
「僕たち選手はクリーンに滑って見せることが仕事。そしてジャッジはそれを評価することが仕事」
と言っています。

キスクラで点の出たあとの表情を見ても、必ずしも納得のいく時ばかりではないでしょう。しかし、「決めるのはジャッジ」という信念を貫いているのは本当に強い気持ちをもっているのだなぁ、と思います。
そして、自分より上位に行った選手に対して素直にリスペクトの言葉を口にできる彼を本当に尊敬します。

明日のFSでは、そのジャッジたちに高評価を出さざるを得ない演技を見せてやってください!


Давай  Серё́жа! 頑張れ、セリョージャ!

ぽちよろしく、更新のモチベになります
にほんブログ村 その他スポーツブログ スケートへ
にほんブログ村

こちらも
blogram投票ボタン
関連記事

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

ワタリガラスは今、翼を研いでいる - セルゲイ・ヴォロノフ、ワールドに向けて


t1y2uA-itog.jpg



セリョージャこと、セルゲイ・ヴォロノフが今年になってろしあんオタのみなさん以外のスケオタさんたちに、これほど知名度、好感度が上がるとは、ファンの私にも正直いって想像できませんでした。NHK杯の際、ダイスと無良くんとの表彰台風景がひとつの大きな原因かな、とも思っていますが・・・↓これですね

6ab443806f334c1b82ecf763072e5438.jpg


そして、彼を詳しく知りたい、とお思いになって検索をして彼の記事を自動翻訳にかけてみた方の中にはやたらと「ワタリガラス」「カラス」と出てくるのに???とお思いになったことがあるのではないでしょうか?
実はこれには理由がありまして・・・。
彼の姓の語幹“Ворон”は、ワタリガラス(大鴉)の意味をもち、北欧神話では大神オーディンの斥候役で、フギン、ムニンという2羽のそれぞれ「思考」と「記憶」を司る、世界を回って状況を神に知らせる役割を持つ強い翼を持った賢い鳥として登場します。こちらに→フギンとムニン
彼の線の太いイーグルを見ていると、まさにそんな感じですよね。(羽生くんや小塚くん、といった日本男子のイーグルはもっとシャープな、燕のようなイメージです)

英名はレイヴン。こんな由来から、電子機器や飛行機の部品などの名前にも使われることがあります。

日本神話で言うと、八咫烏、といったところでしょうか。

彼自身、自分のこの姓が気に入っているようで、自らのインスタグラムに鳥類図鑑かなにかの「Ворон」のページをアップしていたこともあります。

そして、Tシャツ破りでインパクトのあったロステレコム杯でのEXでは、Tシャツの胸に鴉が描かれていました。

Sergei Voronov. 2014 Rostelecom Cup. Gala


ヴォーカルはウラジミール・ヴィソツキー。旧ソ連時代の反体制歌手で、没年がジョン・レノンと同じことやその思想から、ロシアのジョン・レノンとも呼ばれているそうです。ビートルズとスコーピオンズが好き、というセリョージャですから、ひょっとしたら彼のファンでもあるのかな。

今シーズンはずっと安定した成績を上げてきて、評価も高まってきていますから、なんとかワールドでも表彰台に上がって欲しいものです。今シーズン出場した国際試合では、初戦のネーベルホルン杯(4位)を除いて、フィンランディア杯、ロステレコム杯、NHK杯、GPF,欧州選手権と台乗りを続ける、という安定した成績を示しています。確かにワールドとなればライバルは多いですが・・・
直前に病気をして体重が減った、ということが心配材料ではありますが(特にFSのスタミナ)。
初出場した2008年のイエテボリの成績をいまだ上回れていないので、ここでなんとか頑張って欲しい。
ロステレコム杯でのSPと同じくらいの演技ができたら、数多いるライバルたちとも戦えると思うのです。

Sergei Voronov. 2014 Rostelecom Cup SP 90.33


彼はこのプロに向かう自分を戦う白鳥に例えていましたが→白鳥は戦い続ける ―セルゲイ・ヴォロノフ、欧州選手権SP
まさに今の彼はオーディンのもとを飛び立とうと翼を研いでいるワタリガラスなのでしょう。

コフトゥンとともに、悔いのない成績を上げてロシアに是非3枠をもたらしてほしいものです。


そして、私としては是非ワールドで彼のEXが見たい!それも「Yesterday When I Was Young」の方を!


Давай  Серё́жа! 頑張れ、セリョージャ!

ぽちよろしく、更新のモチベになります
にほんブログ村 その他スポーツブログ スケートへ
にほんブログ村

こちらも
blogram投票ボタン
関連記事

テーマ : フィギュアスケート
ジャンル : スポーツ

プロフィール

Dora Quadski

Author:Dora Quadski
確かにフィギュアはジャンプだけじゃないですが・・・でも、やっぱりジャンパー・タイプのスケーターが好きです。
最近応援しているのは、ロシアのセルゲイ・ヴォロノフと、2009年に国別で来日した際に惚れ込んだコンスタンチン・メンショフです。
日本では小塚崇彦君、町田樹君を絶賛応援中!
 
他に、 『スター・トレック』(特にTOS 、TNG)も大好きです。
中でも、P・スチュワート扮するピカード艦長の大ファンです。もちろん、P・スチュワート自身も!
ただ、性格的にはヴァルカンに憧れるクリンゴンって感じかな(笑)ウォーフとサレックに惚れてますw。

そうです、わたしはトレッキー&シャーロッキアンなのです(笑)

カレンダー
02 | 2015/03 | 04
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
スポーツ
334位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ウィンタースポーツ
20位
アクセスランキングを見る>>
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

拘りと屁理屈
検索フォーム
カテゴリ
リンク
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR